

困難を乗り越え、次の100年へ
2006-2026
8
2023/1/1

会長 金川千尋
2023年1月1日、当社の金川千尋代表取締役会長が、肺炎のため亡くなった。享年96歳。葬儀は近親者のみの家族葬で執り行われ、2023年3月29日に東京の帝国ホテルにて「金川千尋を偲ぶ会」が開催された。
金川会長は1950年に東京帝国大学法学部政治学科を卒業後、極東物産(現三井物産)に入社し、1962年に信越化学工業に転じた。1990年に社長に就任し、2010年からは会長として当社グループを率い、塩化ビニル樹脂と半導体シリコンウエハーの世界的企業に育て上げた。塩化ビニル樹脂とシリコンウエハーの分野では世界シェアトップの地位を確立した。
また、1994年3月期から15期連続の増益を達成し、当社の飛躍的な成長に大きく貢献した。1993年には優れた経営者を称える「毎日経済人賞」を受賞するなど、経営手腕は国内外から高く評価され、当社グループの発展と社会的評価の向上に寄与する大きな事績を遺した。
2023/1/11

マイクロLEDディスプレイ向け新規プロセス技術
(概要)当社は、マイクロLEDディスプレイの製造に適用可能な新規プロセス技術と移送部品を開発した。新規プロセス技術は、異方性導電膜(ACF)をレーザーで狙った場所に転写する技術を核としたもので、デクセリアルズ株式会社との共同開発。これにより、マイクロLEDチップの高速かつ高精度な移載を実現し、マイクロLEDディスプレイの製造における重要な課題となっていたチップの正確な配置と接続を解決した。マイクロLEDチップは一辺の長さが数十ミクロンメートル以下の極めて小さなサイズであり、例えば4Kディスプレイ1台を製造するには約2490万個のチップを正確に配列させる必要がある。この技術は高精度なチップの配置を可能にし、製造工程の複雑さと歩留まりの改善に寄与した。
当社はこれまでも、マイクロLEDチップの製造工程と移送工程の複雑さを解消するため、グループの技術を結集して各種移送部品や移送装置を開発。今回の発表はこれらの技術の集大成であり、マイクロLEDディスプレイの普及と市場拡大に向けた重要な一歩となった。さらに、この技術を活用し、低コストで高性能なマイクロLEDディスプレイの実現を目指した。
2023/3/2

車載向けの高圧ケーブルの被覆材に用いられたシリコーン
(概要)当社は、車載向け高圧ケーブルの被覆材に最適な成形用シリコーンゴム「KE-5641-U」を開発した。これは、業界トップレベルの耐電圧特性を持ち、絶縁破壊強さは40kV/mmに達し(従来品は26kV/mm)、シリコーンゴム製であるため耐熱性、耐寒性、耐候性、難燃性など多くの優れた特性を兼ね備え、非シリコーン系被覆材料と比較して長期信頼性にもまさっていた。このため、電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)で求められる高い耐電圧特性を有し、従来の被覆材に比べて被覆層を薄くできて、ケーブルの柔軟性向上と細径化、軽量化を実現した。
「KE-5641-U」は車載用途にとどまらず、産業機械、鉄道設備、エネルギープラントなどの高圧ケーブル被覆材など幅広い用途でも、高性能化や信頼性向上に寄与するとされ、当社が進める持続可能な社会の実現に貢献する製品の一つとなった。
2023/3/29
(概要) 2023年3月29日、東京都千代田区の帝国ホテルで、当社の金川千尋前代表取締役会長の「偲ぶ会」が執り行われた。会場には金川前会長の遺影が飾られ、地球と大洋をモチーフにした大きな祭壇により前会長の海外事業開拓の功績に敬意を表した。また、祭壇には、金川前会長に追贈された旭日重光章の勲章、勲記、位記が飾られた。 偲ぶ会は第1部と第2部の併せて約5時間におよび、金川前会長のご親族をはじめ、取引先、金融機関、マスコミ、アナリストなどの社外関係者、当社の役員、社員およびOBなど参列者は約1500人にのぼった。
2023/3/31
(概要)2023年3月期の当社連結決算は、売上高約2兆8088億円(35.4%増)、営業利益約9982億円(47.6%増)、経常利益約1兆202億円(46.9%増)、当期純利益約7082億円(41.6%増)となり、いずれも過去最高を記録。経常利益は日本の化学会社で初めて1兆円台に達した。配当については、2023年3月期の期末配当金が1株当たり275円に増配され、第2四半期末配当金225円から50円増加となった。年間合計の配当は前期より100円増の1株当たり500円となり、株主還元にも積極的な姿勢を示した。この業績伸長の背景には、当社100%子会社のシンテック社(米国)の大きな業績成長などがあった。
2023/4/1
(概要)当社は、2023年4月1日付で普通株式1株を5株に分割する株式分割を実施した。これに先立ち、2023年1月26日に株式分割および定款の一部変更を公表し、基準日を2023年3月31日、効力発生日を同年4月1日とした。本株式分割により投資単位が引き下げられ、個人投資家を含む幅広い投資家が当社株式へ投資しやすい環境が整備された。
2023/5
(概要)当社は、2050年のカーボンニュートラル達成を目指し、温室効果ガス排出量のうちスコープ1(自社施設からの直接排出)とスコープ2(購入エネルギーの製造時排出)を実質ゼロとするための計画を策定し、この日公表した。当社グループは、これまでにも生産量原単位当たりのエネルギー効率向上や排出削減に継続的に取り組んできたが、今回の計画では事業拡大と温室効果ガス排出量の絶対削減を両立させる方針を明確に示し、持続可能な成長を実現しつつ気候変動対策に積極的に貢献する姿勢を強化した。
また、計画の実行にあたっては、エネルギーの脱炭素化や再生可能エネルギーの導入促進、製造プロセスの革新、リサイクルの推進や物流における削減など、多角的な施策を展開することで、スコープ1およびスコープ2の排出削減を加速させ、2050年のカーボンニュートラル実現に向けた具体的な道筋を示した。
2023/7/3
(概要) 2023年7月3日、日本取引所グループが新たに開発した株価指数「JPXプライム150指数」の算出が開始された。この指数は、東証プライム市場に上場する時価総額上位銘柄の中から、「資本収益性」と「市場評価」の二つの価値創造の観点で選定された150銘柄で構成された。当社はその厳格な選定基準を満たし、価値創造が推定される我が国を代表する企業として初めて同指数の構成銘柄に選定された。
当社は長年にわたり資本効率の向上と持続的な成長を目指した経営を推進しており、2022年4月の東京証券取引所の市場再編に伴い、当社株はプライム市場に移行、より高い市場評価を目指した。JPXプライム150指数への選定は、企業のブランド価値向上に寄与するもので、国内外の投資家からの信頼獲得と資本コストの低減が期待された。
(成果) JPXプライム150指数の構成銘柄として認められたことを契機に、当社はさらなる価値創造に向けた取り組みを加速。エクイティ・スプレッドの拡大を目指し、収益性の高い事業展開や効率的な資本運用の推進、非財務情報の充実やESG(環境・社会・ガバナンス)への対応強化に注力し、持続可能な成長基盤の確立を図った。これらの施策により、株主価値の向上と社会的責任の両立を推進した。
2023/7/12
(概要)2023年7月12日、当社は「一般財団法人 金川千尋未来化学財団」を設立した。これは広く化学の未来に資する人材の育成と研究の支援を通じて、社会の持続的な発展に貢献することを目的としたもの。長年にわたり当社の経営に携わった故金川千尋会長の「未来を見据え新しい事業を生み出した取り組み」を行動規範として継承し、その精神を社内外に広めることを目指し、財団名にも金川千尋氏の名前を冠した。同財団では、研究助成や奨学金支給など多様な人材育成支援を行うことを計画。財団の役員には有識者と社内関係者が招聘あるいは選出された。財団設立にあたり、当社取締役会は財団の事業開始に必要な資金を拠出することを決議し、同財団の活動を支える基盤とした。
2023/7/27

シリコーン製品群
(概要)当社は機能材料セグメントの主力製品であるシリコーンポートフォリオに対して、総額1,000億円規模の大規模な投資計画を発表した。これは、2022年2月に発表した800億円相当の投資計画に続くものであり、高機能シリコーン製品に対する需要の拡大を受けたもの。この投資を通じて、シリコーン製品の用途拡大と製品構成の高機能化、さらに環境配慮型シリコーン製品の拡充を推進し、特にカーボンニュートラルに貢献する環境対応製品への社会的期待が高まるなかで、これに応える形で省エネルギーやCO2削減、省資源化を実現する環境負荷低減型のシリコーン技術の開発と生産体制の強化を図った。
この投資計画は、群馬事業所(群馬県)に加えて直江津工場(新潟県)と武生工場(福井県)、海外ではタイを始めとするアジア各国、アメリカ、ハンガリーなど、広範な既存の製造拠点を対象としたもので、これにより世界規模で事業の成長の加速を目指した。
2023/9/5

QST™基板
(概要)当社は、GaNパワーデバイスの社会実装に不可欠な材料としてQST™基板を位置づけ、かねてより同基板の開発と製品上市を積極的に推進してきた(2020年1月22日および2022年5月18日記事参照)。QST™基板はエピタキシャル層の反りやクラックの発生を抑制でき、高品質な厚膜GaNエピタキシャル成長を大口径で可能にする基板材料であり、この特長を活かして、パワーデバイスだけでなく、5GおよびBeyond 5G向けの高周波デバイスやマイクロLEDディスプレイ用の微小LED成長基板としての応用も期待された。
当社では、 2023年9月6日から8日にかけて台湾で開催された「セミコン台湾」でQST™基板の開発進展について発表し、顧客からの引き合い状況を踏まえて引き続き生産体制を増強。これにより、データセンター向け電源をはじめとするパワーデバイス分野での実用化に向けたエンジニアリング開発を加速させ、国内外の多数の顧客によるQST™基板およびGaN on QST™エピタキシャル基板の評価を進めた。
さらに沖電気工業と共同開発に取り組み、信越化学がQST™など基板を提供し、沖電気工業が培ってきたCrystal Film Bonding(CFB)技術を活用することで、QST™基板からGaNを剥離し異種材料基板へ接合する新たな技術開発を成功させた。これにより、両社は縦型パワーデバイスに新たな可能性を開いた。
2023/10/1
(概要)当社は2023年10月1日付で、シリコーン事業本部内に「シリコーン・グリーン事業推進室」を新設した。これは、2023年7月27日に発表されたシリコーン事業の1,000億円規模の投資計画の一環として設置されたもので、この投資計画に含まれる環境負荷を低減した新製品の開発や生産体制、サプライチェーンの構築を推進するにあたり、同室はこれらの環境配慮型製品群のマーケティングや販売促進を通じて、持続可能な社会の実現に向けた取り組みを加速させる役割を担った。シリコーン・グリーン事業推進室は、地球温暖化対策の重要性を強く認識した上で、新たに「グリーンシリコーン」というカテゴリーを創出し、他社製品との差別化を図りながら市場拡大を推進した。
2024/1/4
(概要)当社の耐水コーティング材「Sicle™(サイクル)」が、日本経済新聞社が主催する「日経優秀製品・サービス賞2023」の最優秀賞に選定された。42回目を迎えた日経優秀製品・サービス賞は、約2千点の新製品・サービスの中から生産財5点、消費財5点、サービス6点の計16点を最優秀賞に選定、当社の製品はその生産財5点の一つに選ばれた。これは技術開発性、価格対効果性、業績寄与度、成長性、独自性、社会的インパクトの観点から総合的に評価されたもので、当社の技術力と環境配慮の両立を示す重要な成果となった。なお当社は、1986年のフェロモン製剤「ハマキコン」以来の最優秀賞受賞となった。
受賞した「Sicle™」は、ケイ素と酸素を主成分とするコーティング材で、段ボールなどの紙製品に塗布することで高い耐水性を付与する技術。2022年10月に発売開始後、紙製品メーカーや物流会社から多数の問い合わせが寄せられ、量産に向けたサンプル評価や用途開発が積極的に進められてきた。流通サービス分野で人手不足解消などを図り普及してきた「置き配」など、新たな需要に対応可能であることや、環境負荷が小さくリサイクルが容易である点が審査員から高く評価された。
2024/2/1
(概要)米国のプラスチック工業会などが設立した「Plastics Hall of Fame」(プラスチックの殿堂)に、当社の金川千尋前会長が選出された。これはプラスチック産業の発展に多大な貢献をした人物を称えるもので、1972年に設立された非営利団体が選考する名誉ある賞である。このプラスチックの殿堂入りは、それまでにファナック株式会社の稲葉善治会長ら4人が選ばれていた。
金川前会長は長年にわたり塩化ビニル(塩ビ)産業の発展に寄与し、環境保全や地域社会への貢献にも力を注いできた。それらの活動が社会的にも高く評価され、1981年にはテキサス州名誉州民およびヒューストン市名誉市民、1997年にはルイジアナ州名誉州代表および名誉州務長官に任命された。 殿堂入りを祝う式典は2024年5月5日に米国フロリダ州オーランドで開催された。
2024/3/1

地産地消型PPAへ参加する群馬事業所
(概要)当社は、2024年3月1日に群馬県が創設した「地産地消型PPA(群馬モデル)」への参加を発表した。この制度は県営水力発電所が生み出す温室効果ガス排出量ゼロの電力を県内事業者に供給するもの。当社はこの電力を活用することで自社の製造工程における温室効果ガス排出量削減を推進することとした。当社はシリコーン事業において1000億円規模の投資を進め、その中で環境負荷低減にも取り組んできた。群馬事業所(群馬県)は、シリコーン事業の主力工場として、電力自給率の向上とともに温室効果ガス排出量を現状比で14%削減するために約100億円の設備投資を実施。これに加え、環境対応型製品の供給能力増強にも同額の投資を行い、持続可能な製造体制の構築を目指した。こうした中で「地産地消型PPA(群馬モデル)」による再生可能エネルギー由来の電力を活用することで、製造工程の省エネルギー推進や温室効果ガス排出量を削減するとともに、地域社会との連携を強化し、カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みを加速させた。
2024/3/6
(概要)当社は医薬用セルロース事業の強化を目的として、直江津工場(新潟県)において大規模な設備投資を実施することとした。この投資は、日本薬局方に準拠したヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステルを含む高機能医薬用セルロースの生産能力を倍増させるもの。 投資規模は約100億円で、2026年の完成を目指して新設備の導入を進めた。これにより、医薬用セルロースの生産能力を大幅に増強し、錠剤のコーティング剤や崩壊剤として広く用いられている「Shin-Etsu AQOAT®(シンエツエーコート)」の安定供給体制を強化。加えて、直江津工場周辺の医薬用セルロース倉庫の保管能力も倍増し、不測の事態に備えた供給リスクの低減にも取り組んだ。
(関連) 医薬用セルロースに関して、当社は医薬品分野における市場シェアの拡大と安定供給を両立させることを目指し、2025年3月にはドイツの拠点で医薬用添加剤である「L-HPC®」の生産設備新設を決定。国内外の生産拠点の複数化や高機能素材の開発を推進、医薬用セルロースの世界的な需要増加に対応するための供給体制の強化を図った。
2024/3/14

水系速硬化シリコーンレジンの用途例(耐候性塗料のバインダー)
(概要)当社は、業界で初めて乳化剤を使用しない水系の速硬化型シリコーンレジン「KRW-6000シリーズ」を開発した。この製品は従来の水系シリコーンレジンに用いられていた乳化剤を一切使用せず、水に分散可能な新技術を実現したもの。従来の水系シリコーンレジンは乳化剤の添加により皮膜特性が劣る傾向があり、乾燥や硬化に時間を要する課題があった。今回開発した「KRW-6000シリーズ」は乳化剤を使わないことで皮膜特性が大幅に向上し、加熱による速硬化も可能となった。これにより、従来の有機溶剤系シリコーンレジンに匹敵する性能を水系で実現し、VOCフリー化や温室効果ガス削減にも貢献した。
当社は、持続可能な社会の実現に寄与することを目指し、この新製品の改良と市場拡大を推進。2024年5月には「第7回塗料・塗装設備展 大阪」に出展するなど、業界関係者に向けて製品の紹介に努めた。
2024/4/9

群馬県庁で行われた記者会見
(概要)当社は、半導体露光材料事業の拡大を目的として、同事業で四番目の生産拠点となる新工場を群馬県伊勢崎市に建設することを決定し、正式に発表した。これは当社としては56年ぶりとなる国内生産拠点の設営となった。新工場は半導体ウエハーに回路を描く工程で使われる露光用材料の製造および開発を担う重要な施設として位置づけられた。 新工場の建設用地は、群馬県および伊勢崎市の協力も得て、伊勢崎市内の約15万平方メートルの事業用地を選定、取得し、段階的に工場を建設する計画とした。その第一期の投資は2026年までの完工を目指し、投資総額は用地取得を含めて約830億円を見込んだ。
(意義)国内外でAIの社会実装の進展等を背景に半導体への需要が急速に拡大する中、当社はこの新工場の設立により、既存の三拠点とともに半導体露光材料の生産能力を大幅に強化することとなった。これにより国内外の半導体市場の需要増加に対応して、競争力の向上を図るとともに、新工場の稼働が地域経済に貢献することも期した。2024年4月11日に群馬県庁で行われた記者会見には、群馬県知事や伊勢崎市長も出席し、地域と連携した事業展開の意義が強調された。
2024/4/22
(概要)当社は2024年4月22日、米国ペンシルバニア州のベンチャー企業Setex Technologiesから、生物模倣による乾式接着技術を取得したことを発表した。同技術はヤモリの手の微細な突起構造を模倣し、接着剤を使わずに材料表面に強い摩擦や粘着性を付与するもの。当社は「ShineGrip(シャイングリップ)」™と命名し、この技術の新たな市場開拓と技術提案を進めることを決定した。
「ShineGrip」™は、従来の接着剤を使用しないため、接着剤残渣が発生せずクリーンな工程を実現できることが特徴。特に半導体製造工程などでの工程の簡素化と環境負荷の軽減が期待された。加えて、高温環境下でも保持機能を発揮し、繰り返しの接着が可能であることから、顧客のグリーントランスフォーメーション(GX)推進にも貢献した。
同技術の市場開拓に関しては、Setex Technologiesが消費者向け市場に専念し、当社が企業向け市場に特化するとした。当社は、既存の多様な材料技術と組み合わせることで、接着剤を使わない新たな接着機構を実現し、多様な産業分野での応用展開の可能性を広げ、環境に配慮したクリーンな製造プロセスの普及に役立てるとともに、当社の技術力強化も視野に入れた取り組みを展開した。
2024/4/25
(概要) 2024年4月25日、当社はSi(シリコン)ウエハーの加工を手掛ける三益半導体工業の全株式を株式公開買い付け(TOB)により取得し、完全子会社化することを決定した。これにより、従来の43%強の出資比率から全株取得へと移行し、経営資源の相互活用に対する制約を排除し、機動的な経営判断が可能な経営体制を構築することを目指した。また三益半導体工業の経営陣もこの公開買付けに賛同し、株主に対して応募を推奨する決議を行った。
(背景)三益半導体工業は当社の持ち分法適用会社であり、シリコンウエハーの研磨加工などの半導体材料加工を専門に行ってきた。完全子会社化は、両社の強みを融合して半導体業界における競争力を一層強化し、半導体材料分野での国内最大手としての地位をさらに強固にする戦略的措置であった。公開買付けの価格は1株あたり3,700円に設定され、2024年7月下旬を目途にTOBを開始するとした。当社は、三益半導体工業との長期的なパートナーシップを基盤に、両社の事業の持続的成長とシナジー効果の最大化を図るため、今後も積極的な連携と投資を推進していく方針を示した。
2024/5/15

中国浙江省シリコーン新工場
(概要)当社は、中国浙江省に新会社「信越有机硅(平湖)有限公司」を設立し、シリコーン製品の新工場を建設することを決定した。これまで当社は、中国におけるシリコーン製品への需要に対応するため、2002年に中国の浙江省に「浙江信越精細化工有限公司」(以下浙江信越)を設立し、2003年からシリコーン製品の生産を開始。顧客や市場のご要望にお応えして順調に生産を続けてきた。その一方で、中国国内の需要は拡大し続けており、これに応えるために生産能力の拡大が求められていた。この新会社設立は、既存の浙江省内のシリコーン生産工場の生産能力増強と製品ラインアップの拡充を図るもの。新工場は上海から85kmの距離にある浙江省平湖市の独山港経済開発区に建設され、用地面積は4万平方メートルで、既存工場の2倍の規模。新工場では従来の汎用シリコーンエマルジョン製品に加え、機能性や環境配慮型の高機能シリコーン製品の生産も計画されており、2026年2月の完成を目指していた。投資金額は事業用地の取得も含めて約21億円。中国国内のシリコーン需要が中長期的に拡大すること見込んだ戦略的な投資であった。
2024/6/12

新たな装置と工法で作成したサンプルの断面
(概要)当社は、半導体の後工程で用いるパッケージ基板製造装置と新工法を開発した。この新工法は、従来の中間基板であるインターポーザの機能をパッケージ基板に直接盛り込むことを可能とし、工程の大幅な簡略化を実現するもの。これにより、チップレット同士の接続工程がパッケージ基板上で完結し、工程短縮とコスト削減に寄与する。新装置は、半導体の前工程で用いられていたデュアルダマシン工法を後工程用パッケージ基板製造に応用したもので、「信越デュアルダマシン法」と称した。従来工法では困難だった微細加工を可能とし、さらに、パッケージ基板製造におけるフォトレジストプロセスを不要とした。
(反響)発表後、2024年6月に開催された展示会で、この新製造装置と工法を紹介し、セミナーも開催。これに半導体メーカーや材料メーカー、装置メーカーなど多様な関係者が訪れ、新規商談が活発に行われるなど、業界内で大きな期待をもって迎えられた。
2024/8/13

三益半導体工業株式会社
(概要)当社は、三益半導体工業の株式公開買付け(TOB)を2024年6月21日から8月5日まで実施した。買付価格は1株3,700円で、応募株式の全てを買い付け、当社は三益半導体の14,654,042株を取得、取得価額は約542億円。三益半導体における当社の持株比率は、公開買付け前の43.87%から88.37%へ上昇し、当社連結子会社となる。また、三益半導体の資本規模により同日付で特定子会社となった。
2024/9/2

GaN300mm QST™基板
(概要)当社は、GaN専用の成長基板であるQST™基板の300mm(12インチ)化を実現、サンプル供給を開始した。これまで150mm(6インチ)、200mm(8インチ)のQST™基板および各口径のGaN on QST™エピタキシャル基板を販売してきたが、さらなる大口径化が、顧客から強く求められてきた。当社はこれに応え、300mm化に挑戦し、成功させた。
QST™基板は、従来のSi基板では困難だった反りやクラックの発生を抑制し、高品質な厚膜GaNエピタキシャル成長を可能にするもので、これを使うことでSi生産ラインの利用が可能となり、300mm基板の大口径化による生産性向上と製造コストの大幅な低減が期待された。
(反響) 2024年9月4日から6日にかけて台湾・台北市で開催された「SEMICON TAIWAN」で、この300mm QST™基板を展示。GaNパワーデバイスの社会実装に向けた重要な一歩として業界内外から注目を集めた。当社は従来の150mm、200mmに加え、300mm基板の量産化を推進し、世界的に高まっている次世代デバイスへのニーズに対応を図った。
2024/9/11

バスバーの被覆に用いられたシリコーン
(概要)当社は、業界初となるバスバー被覆用の熱収縮シリコーンゴムチューブ「ST-ORタイプ」を開発し、この日発表するに至った。「ST-ORタイプ」は銅やアルミニウム製の導体棒であるバスバーの絶縁被覆に特化したもので、高い電気絶縁性と耐熱性を兼ね備え、電気自動車(EV)やハイブリッド自動車(HEV)の高電圧化・大電流化に伴う厳しい絶縁要求に応える高い信頼性を実現。加熱によって内径が約半分に収縮し、複雑な形状のバスバーにも容易に被覆できるため、加工工程の省力化と短縮化にも寄与した。
開発にあたっては、当社が30年以上培ってきたシリコーンゴム技術を基盤とし、柔軟性や耐候性、耐薬品性に優れた材料設計に注力し、過酷な環境下でも安定した性能を維持し、環境意識の高まりに対応した簡便な絶縁被覆工程の実現を目指した。これにより、本製品は、配電システムの信頼性向上と持続可能な社会の実現に貢献する重要な技術革新となった。
2024/10/30

世界最小の3Dセンサー用光源デバイス「Amtelus®」
(概要)当社は、SCIVAX株式会社が開発した世界最小サイズの3Dセンサー用光源デバイス「Amtelus®」の量産化を可能とする新材料を開発した。この材料は光学特性と素子保護の封止特性を両立させ、高硬度でダイシングが可能な点が特徴。これにより、従来課題となっていた実装面積の大幅な縮小を実現した。製品の販売は当社が担当し、 2024年11月から評価用サンプルの出荷を開始。自動運転やAR/VR、次世代ライフサイエンス分野のバイタルセンサーなど、多様な領域への応用展開を視野に入れた販売活動を推進した。
(Amtelus®)光学レンズPlatanus®の機能を組み込んだ3Dセンサー用光源デバイスで、実装面積は従来比の1/10以下の1㎜²未満、デバイスの厚みも半分以下となった。この大幅な小型化により、ARグラスやスマートフォンなど、これまで搭載が難しかった小型機器への適用を可能とした。また、複数の「Amtelus®」を組み合わせることで、より精緻な3Dセンシングが実現できる。
(反響)信越化学工業とSCIVAXは、2024年夏に米国で開催されたVehicle Display Expoに共同出展し、幅広い業界からの注目を集めた。
2024/12/2
(概要)当社は、電子機器設計上の熱問題の解決を支援するプラットフォーム「Thermalvision™」を開発し、Webサイト上で公開した。このプラットフォームは、熱設計に役立つ多様なコンテンツを提供しており、特にWeb上で簡易的な熱シミュレーションを実施できるツールを搭載。電子機器の筐体や電子基板の熱設計に関する検討を迅速かつ効率的に行うことが可能となり、熱問題の早期発見と解決を支援。同社製品だけでなく他社の熱関連製品情報もワンストップで検索できるなど、熱設計に関わる技術者や設計者の利便性を大幅に向上さた。
また、本プラットフォームは、熱設計に特化した技術者コミュニティの活性化を目指し、会員向け機能を含めて全て無償で利用可能とした。当社は公開後も機能の改良を進め、熱問題に対する技術者の支援を拡充することで、電子機器の熱関連事業の拡大に貢献するツールとした。
Thermalvision™ URL: https://public.thermoinfo.com/
2024/12
(概要)当社の100%子会社シンテック社(米国)は、ルイジアナ州プラケマインの既存工場隣接地で進めてきた塩から塩化ビニル樹脂(PVC)を一貫生産する新工場の増設を完了した。新工場の生産能力はPVC年間40万トン、か(苛)性ソーダ年間39万トン。建設投資額は約12.5億ドル。この増設により、シンテック社全体のPVCの年産能力は364万トン、か(苛)性ソーダは195万トンに拡大した。PVCは温室効果ガス低減と社会・生活インフラの拡充の両立に資する素材として、世界的に需要が増加し続けており、シンテック社はこれに応えるため長期安定的な原料確保と一貫生産体制の強化に引き続き注力した。
(関連)シンテック社は2024年10月17日に、1974年の操業開始から50周年を迎えた。この記念すべき年に16回目となるこの新増設を完工し、シンテック社はさらなる発展に向けての第一歩を踏み出した。
2025/2/28

タイで再生可能エネルギーを使用するASM
(概要)当社グループは、タイの生産拠点3社での再生可能エネルギーの活用を決定した。これは当社100%子会社のシンエツシリコーンズタイランド社(タイ、以下SEST)内に設けた再生可能エネルギー設備で電力と蒸気を製造し、そのエネルギーを、SESTおよび当社100%子会社のアジアシリコーンズモノマー社(タイ、以下ASM)とシンエツ ニューマテリアルズ タイランド社(タイ、以下SENT)の3社に供給して、3社の使用エネルギーの一部を賄い、環境負荷の低減を図るもの。再生可能エネルギー設備はタイ国内のエネルギー供給会社「NS-OG Energy Solutions (Thailand) Ltd.(NSET)」が設置し、タイ国内で産出した木質チップを燃料として、電気と蒸気を生み出すこととした。この取り組みにより、3社合計の温室効果ガス排出量は年間約4.8万トン削減された。これは環境省の令和6年度「二国間クレジット制度(JCM)資金支援事業」の設備補助事業として採択されたプロジェクトで、タイ政府の再生可能エネルギー導入促進政策とも連携し、脱炭素社会の実現を目指した。
2025/3/4

掃除大賞の賞状授与式
(概要)日本そうじ協会が主催する「掃除大賞2024」で、当社100%子会社の信越半導体白河工場(福島県)が掃除大賞と経済産業大臣賞に選出された。同大賞には、全国40都道府県から100を超える企業の応募があり、書類選考、現地視察などの厳正な審査を経て受賞したもの。この賞は掃除を通じて人材育成や全国の教育現場や会社組織の発展に寄与することを目指して2014年に創設されたもので、単なる清掃活動を評価するものではなく、掃除を通じて生活文化や産業の発展に寄与する個人や団体を表彰してきた。白河工場は、高品質なシリコンウエハー製造に不可欠である清潔な職場環境の維持に注力し、継続的な改善活動に取り組んでおり、この受賞ではその実践的な努力が高く評価され、特に整理整頓を徹底し高い生産性を実現していることが、商品サービスの質向上や社員のモチベーション向上に寄与していると認められた。
2025年3月4日に白河工場で賞状授与式が行われ、席上、日本そうじ協会の今村暁理事長から、白河工場の清潔な職場環境の維持と継続的な改善活動が世界への貢献として高く評価されたことを伝えられた。
2025/3/28
(概要)当社は医薬用セルロース事業の強化を目指し、当社100%子会社のSEタイローズ(ドイツ) と日本の直江津工場(新潟県)の2拠点への設備投資を決定した。投資額は約100億円。ドイツでは医薬用添加剤「L-HPC®」の生産設備を既存設備に隣接して新設し、2026年中の完成を目指した。直江津工場では医薬用セルロース倉庫の保管能力を2倍に拡大し、供給の安定化を図るものとした。これらの設備投資により、国内外の生産拠点の分散化を進め、自然災害などのリスクに強い供給体制を構築。これにより、世界規模で増加を続ける需要に対応し、世界の医薬用セルロース市場において確立したトップシェアを維持しつつ、医薬品向け素材の安定供給をさらに強化した。
2025/4/17
(概要)当社は北海道大学との共同開発により、マイクロ流体デバイスを部品として組み込んだ脂質ナノ粒子(LNP)の生産装置を共同開発した。本生産装置の大きな特徴は、1台の装置で少量多品種のナノ医薬品から大量生産まで対応可能な点。1平方メートルの狭小スペースにも設置でき、個別化医療向けの少量多品種製造から、パンデミック時の感染症用ワクチンの大量生産に切り替えられることができ、平時は企業のニーズに応じたナノ医薬品の製造を行い、有事には迅速にワクチン製造に対応するための基盤設備として活用できる。装置には北海道大学が開発した独自のマイクロ流体デバイス「iLiNP®」と当社の合成石英素材および加工技術を組み合わせており、大量生産に適したマイクロ流体デバイスを実現した。さらに、当社の子会社である信越エンジニアリングの装置設計技術を活用し、医薬品製造に必要なGMP基準に準拠した仕様で製造された。
(関連)当社は2025年4月より本生産装置の生産を開始し、販売はライラックファーマ株式会社が担当。この装置は、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)に対するmRNAワクチンにも利用されるLNPの製造に適しており、今後は様々な感染症やがんワクチンなどへの応用が期待される装置。また、研究開発向けにさらに小型化したベンチトップ型LNP生産装置も、2025年末の試作品完成を目指して開発が進められた。
2025/5/12

パーソナルケア用シリコーン
(概要)当社は、ケイ素化学を駆使した課題解決の一環として、新規のパーソナルケア用品向けシリコーン製品を開発した。これはジメチルシリコーンオイルの分子構造のメチル基の一部を親水性官能基に置換したタイプで、使用感の向上や高機能化を実現。スキンケアやメイクアップ、日焼け止めなどの各種パーソナルケア用品に、より快適な使用感と耐水性を付与する。これによりパーソナルケア業界における多様な消費者ニーズに応えるとともに、環境問題にも対応することが可能。当社はシリコーン技術を活用した製品開発を通じて、パーソナルケア用途の拡充や環境対応製品の供給を強化し、化粧品分野の技術革新に寄与するとともに当社シリコーン製品の優位性確保を目指した。
2025/11/7

熱可塑性シリコーン
(概要)当社は、ケイ素化学を活用した課題解決の取り組みの一環として、リサイクルが可能な熱可塑性シリコーンを開発した。シリコーンゴムは一般に熱硬化性という特性を有するため、加熱によって固化し、再利用が難しいとされてきた。新材料は熱を加えると軟化・成形でき、冷却で固化する特性を有するもので、従来のシリコーンにはなかった再資源化の可能性を広げた。
この熱可塑性シリコーンは、高硬度でありながら高い伸長性を備え、透明性や着色性、射出成形性にも優れる。さらに、コーティング用途にも応用できるなど、ゴムとプラスチックの双方に近い幅広い特性を実現。モバイル機器やスポーツ用品の接触部材、医療・介護機器の表面コーティングなど、従来のシリコーンゴムとは異なる用途にも可能性を広げた。
2025/11/13
(概要)当社がライセンスを受けて開発・製造するGaN専用の成長基板「QST™基板」が、IMECの300mm GaNパワーデバイス開発プログラムに導入され、優れた評価を得た。当社の300mm QST™基板上で作製した5µm厚のGaN HEMTは、300mm基板として世界最高記録となる650V超の高耐圧を達成。これはSEMI規格に準拠した基板で、面内均一性にも優れた結果が得られた。
QST™基板は、大口径でも反りやクラックを抑え、安定した結晶成長が可能とし、当社は150mm、200mmに加えて300mm QST™基板のサンプル提供を進め、パワーデバイスや高周波デバイス、LEDデバイスに加え、AIデータセンター向け電源などへの応用も視野に、量産化への道を開いた。
2026/3/5

エチレン工場(2020年4月)
(概要)当社の100%子会社シンテック社(米国)は、ルイジアナ州プラケマインの工業用地で、塩化ビニル樹脂(PVC)の原料から一貫生産する体制をさらに強化するため、総額34億ドルの投資を実施することを決めた。これは、新たにエチレン工場と電解・塩化ビニルモノマー(VCM)工場を建設し、原料の安定調達と生産基盤を強化するもの。増強能力はエチレン625千トン、VCM500千トン、か(苛)性ソーダ310千トンで、2030年末の完成を予定。PVCは生活インフラを支える樹脂として幅広く使われ、環境負荷が比較的低いことから、世界規模で継続して需要が拡大してきた。シンテック社はその原料となるVCMの生産体制を増強することで、世界規模でのPVCの安定供給と販売拡大の基盤強化を図った。
2026/4/3

伊勢崎工場
(概要)4月3日、当社では56年ぶりの国内新工場となる伊勢崎工場の竣工式が執り行われた。当社にとって56年ぶりとなる新工場が完成した。同工場は、半導体製造工程に欠かせない露光材料の生産拠点で、群馬県伊勢崎市国領町に約平方15万メートルの敷地を有する。この日、竣工を迎えたのはその第1期分で、製造設備やユーティリティ施設などが整備された。
竣工式では、当社の斉藤社長が挨拶を行い、半導体の需要が急速に拡大する中、短期間で同工場を完成した意義や地元自治体の協力への感謝の言葉を述べた。また、群馬県および伊勢崎市からは歓迎と期待の言葉が寄せられた。
2026/4/14
(概要)ダイキン工業、日立製作所、東京エコリサイクルとともに、業務用エアコン圧縮機に使用されるレアアース磁石のリサイクルに向けた協創を開始した。日本国内で修理・オーバーホールに伴い交換されるダイキン製業務用エアコンの圧縮機を回収し、分解・脱磁・磁石取り出しを経て、当社が再生素材から新たなレアアース磁石を製造する国内初の循環スキームの構築を目指す。分解工程にはAI画像認識技術やロボットを活用し、回収から品質評価までを一貫してデータ管理することで、効率化とトレーサビリティ向上を図る。当社は、1960年代から培ってきたレアアース技術を生かし、資源循環と環境負荷低減に貢献する。2026年中に自動化装置などの開発を進め、2027年から本格稼働を開始する予定で進めることになった。
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